基礎知識

台風の一生

台風とは

熱帯の海上で発生する低気圧を「熱帯低気圧」と呼び,このうち北西太平洋で発達して中心付近の最大風速がおよそ17m/s(風力8)以上になったものを「台風」と呼びます。

台風は上空の風に流されて動き,また地球の自転の影響で北へ向かう性質を持っています。そのため,通常東風が吹いている低緯度では台風は西へ流されながら次第に北上し,上空で強い西風(偏西風)が吹いている中・高緯度に来ると台風は速い速度で北東へ進みます。

台風は暖かい海面から供給された水蒸気が凝結して雲粒になるときに放出される熱をエネルギーとして発達します。平均的な台風の持つエネルギーは広島,長崎に落とされた原子爆弾の10万個分に相当する巨大なものといわれています。しかし,移動する際に海面や地上との摩擦により絶えずエネルギーを失っており,仮にエネルギーの供給がなくなれば2~3日で消滅してしまいます。また,日本付近に接近すると上空に寒気が流れ込むようになり,次第に台風本来の性質を失って「温帯低気圧」に変わります。あるいは,熱エネルギーの供給が少なくなり衰えて「熱帯低気圧」に変わることもあります。上陸した台風が急速に衰えるのは水蒸気の供給が絶たれ,さらに陸地の摩擦によりエネルギーが失われるからです。

台風の一生

台風の一生は,大別すると次の4つの段階に分けることができます。(衛星写真は平成2年の台風第19号のものです)

発生期 海面水温が高い熱帯の海上では上昇気流が発生しやすく,この気流によって次々と発生した積乱雲(日本では夏に多く見られ,入道雲とも言います)が多数まとまって渦を形成するようになり,渦の中心付近の気圧が下がり始め,台風になるまでの期間です。このころは進行方向や速度は非常に不安定です。低緯度地方で弱い大気の循環(空気のうず)として発生してから台風に発達するまでの期間でこのことは進行方向や速度が非常に不安定です。
発達期 台風となってから,中心気圧が下がり勢力が最も強くなるまでの期間です。暖かい海面から供給される水蒸気をエネルギー源として発達し,中心気圧はぐんぐん下がり,中心付近の風速も急激に強くなります。台風に発達してから中心気圧が最低まで深まり,勢力が最も強くなるまでの期間で,中心気圧は急激に深まり,同時に中心付近の最大風速も急速に強まります。
最盛期 中心付近の最大風速は徐々に弱まる傾向に入りますが,暴風の範囲はむしろ広がる期間です。
衰退期 衰弱して消滅するまでの期間です。台風は海面水温が熱帯よりも低い日本付近に来ると海からの水蒸気の供給が絶たれ,さらに北からの寒気の影響が加わり,台風本来の性質を失って寒気と暖気の境である前線を伴う「温帯低気圧」に変わります。しかし,中心付近の最大風速のピークは過ぎていますが,強い風の範囲は広がるため低気圧の中心から離れた場所で大きな災害が起こったり,あるいは寒気の影響を受けて再発達して風が強くなり災害を起こすこともあります。

また,台風がそのまま衰えて「熱帯低気圧」に変わる場合もありますが,この場合は最大風速が17m/s未満になっただけであり,強い雨が降ることがありますので,「温帯低気圧」「熱帯低気圧」いずれの場合も消滅するまで油断はできません。日本に接近する台風は主に最盛期と衰弱期のものです。

台風の大きさと強さ、番号と名前

気象庁は台風のおおよその勢力を示す目安として,下表のように台風の「大きさ」と「強さ」 を表現します。 「大きさ」は「強風域(平均風速15m/s以上の強い風が吹いている範囲)」の半径で,台風の「強さ」は「最大風速」で区分しています。

さらに,強風域の内側で平均風速25m/s以上の風が吹いている範囲を暴風域と呼びます。

強さの階級分け

階級 最大風速
強い 33m/s(64ノット)以上〜44m/s(85ノット)未満
非常に強い

44m/s(85ノット)以上〜54m/s(105ノット)未満

猛烈な 54m/s(105ノット)以上
大きさの階級分け

階級 風速15m/s以上の半径
大型(大きい) 500km以上〜800km未満
超大型(非常に大きい) 800km以上

大型、超大型の台風それぞれの大きさは,日本列島の大きさと比較すると以下のようになります

台風に関する情報の中では台風の大きさと強さを組み合わせて,「大型で強い台風」のように呼びます。例えば「強い台風」と発表している場合、その台風は、強風域の半径が500km未満で,中心付近の最大風速は33~43m/sあって暴風域を伴っていることを表します。なお,天気図上では,暴風域を円形で示します。この円内は暴風がいつ吹いてもおかしくない範囲です。


台風番号と台風名

気象庁では毎年1月1日以後,最も早く発生した台風を第1号とし,以後台風の発生順に番号を付けています。なお,一度発生した台風が衰えて「熱帯低気圧」になった後で再び発達して台風になった場合は同じ番号を付けます。また、北西太平洋領域に発生する台風の呼名として、1999年までは米国が英語名をつけていましたが、これに代わり2000年1月1日からアジア名を用いることとなりました。

気象庁ホームページ、福岡県防災安全課のホームページより引用しています